弊社社長の坂本が大阪ニットファッション工業組合大阪ニット会報 2020 NO.102に寄稿した原稿です。同誌同ページには大阪府吉村知事も寄稿されています。
『新年明けましておめでとうございます。
本年は、いよいよ東京オリンピックが開催されます。そして大阪万博を5年後に控え、様々な取り組みが具体的に始まります。東京オリンピックでは当初、そのシンボルマークを巡って盗作問題が取りざたされた一幕もありました。直近ではオリンピックの陸上競技マラソンのコースを巡る問題も生じているようです。
大きなイベントになればなるほど、その運営を巡って多くの課題や問題が生じるものですが、かつて日本の大成長を予見させた大阪万博では、30代を中心とした若い世代が活動の場を得て様々な経験をし、こうした困難を乗り越えていたのです。彼らの中からはその後の日本の発展を支えた優れた人材が数多く現れることとなります。デザインやファッションの分野で活躍した人たちでは、漫画やイラストを手掛けた手塚治虫やちばてつや、建築設計の黒川紀章、万博のポスターを手掛けた横尾忠則、そしてファッションではコンパニオンのユニフォームをデザインしたコシノ・ジュンコなど、この他にも様々な分野で日本で暮らす人ならば誰もが知っているような日本を代表するクリエーターが数多く輩出されました。
私のこれまでのコンサルティングの経験でも30代の経営者やプロジェクトリーダーと関わった事業は成功率が高かった。例えばニット関連の会社ではM.&KYOKO佐藤繊維株式会社(当時専務・30代)、evam eva近藤ニット株式会社(当時常務・30代)、YoshiYoshibypj株式会社吉村ニット(当時社長・30代)など、いずれも若くして困難な状況にある会社を支える若きリーダーたちであった。彼らは誰よりも多くの課題を抱えながらも考え行動した。今では各々が日本の市場で大手アパレルの有力ブランドと互して戦い、海外市場にも進出を果たしています。
縮小を続けているニット業界にあっては、彼らは少数派かもしれませんが、他社に真似のできない良い物を作る為にコストがかかり、その為に価格が高くなったとしても消費者が認めてくれれば生き残ることが出来るということを彼らのブランドは教えてくれました。
リストラや廃業を繰り返し閉塞感が漂うこの業界にとって、こうした成功に導く人材の育成は急務です。このままでは本来継承されるべき物作りに関する技術も途絶えてしまいます。何より今後、企業が生き残る為に最も重要となるマーケティング力やデザイン力も多感な若い世代が最も得意とする分野です。
「大阪ニットファッション工業協同組合」の皆さんが、業界の現状を打開するためには次世代を担う若い世代が挑戦できるような機会を生み出すことが大事です。例えば大阪万博で「日本のファッション産業ここにあり」と言うような世界に発信できるジャパンファッションパビリオンの開設を進めていく事やまた同じ悩みを抱えている全国の同業者の人たちへも働きかけていくことも、これからの重要な課題になるかもしれません。
万博開催まで5年、若き人材を育成し、新たな物づくりに取り組むにはまだ十分な時間があります。このようなことがただの初夢となるのか、あるいは本当の夢として実現してしまうのか、いずれにしてもどのような将来になるかを決めるのは今ある私たちなのです。それでは皆様今年も良いお年をお過ごし下さい。』